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『トウモコロシ』 黒澤優子 著

¥1,870 税込

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単行本: 254ページ
出版社: 株式会社パイレーツ大阪
ISBN-10: 4990808401 ISBN-13: 978-4990808402
発売日: 2015/2/17

愚かで愛しい人間たちへの、時に優しく、時に冷酷なまなざし。 この世界への限りない肯定にみちた、変幻自在の語り部・黒澤優子第一短編集。 『トウモコロシ』所収の作品群は作者が発表のあてもなく十年以上の歳月をかけて書きためた短編小説である。これだけのクオリティと物量のものを独力で書き上げ、本というカタチにするまでには、想像を絶する執念があったに違いない。しかし、いま目の前に届けられたこの作品集を読む私たちの胸を打つのは、なんとも奇妙な静けさである。ここには自己顕示欲もなければ批判もない。 キャラクターは際立っていて、グロテスクで騒々しく、ヴィヴィッドで今にも本から抜け出してきそうだ。読者である私たちにも身に覚えのある想い、感情、自己肯定と自己否定の狭間に揺れ動きながら、誰もが精一杯に命を燃焼させて生きている。優しく手をさしのべられることもなく、突き放されて。 作者・黒澤優子はこの初の自著を、ちょうど誕生日を迎えた友人の1人にプレゼントしようと思った。しかしすぐに「軽々しく人にあげる本じゃないな」と思いとどまった。お金を出して買ってくれる人だけに届けたい。これはこの短編小説集の本質をよくあらわすエピソードかもしれない。 というのも、読書の気持ちよさを提供するような作品ではないからだ。ポップで軽妙洒脱な文体の裏にも棘と毒があり、体力の落ちているときなどに読むと鬱病になりかねない。この世のたてまえを剥ぎ、あまり直視したくもない真実をグサグサと突き刺してくる。ひょっとしたら多くの人にとって、このようなモノは一生に一度も触れることなく通り過ぎたほうが“賢明”なのかもしれない。しかし通り過ぎることのできない一部の人にとっては、この本は、世界を変える一冊になるかもしれない。読み終えたあとでは見慣れた景色が全く違って見え、自分のうちに全く新しいのもが芽生えてしまったように感じる、そういう一冊になるかもしれない。 たとえばあなたが不治の病を得て、余命3ヵ月を宣告され、家族や恋人、友人達との別れを済ませ、この世の名残を惜しんでいるとき、死の準備のあいまにでも、醜悪で美しい『トウモコロシ』を手にとって読んでほしい。また、あなたが心ならずも兵士として戦争へ行かなければならなくなり、砲弾の飛び交う戦場で、ひとときのいこいに飯盒で炊いた粥をすすっている夜、人間の愚行をすべて無言で赦しているような『トウモコロシ』をそっと鞄から取り出し、月と星の明かりで読んでほしい。たぶんそれがこの本にとっての幸せだから。 ブルースが人生のどうにもならなさを否定も肯定もせず、それと共に生き、並走していく音楽だとすれば、この本はブルースだ。聴き取ってほしい。善悪も美醜も快不快も、すべての二項対立を無化して、無限のふところの深さで奏でられる人間讃歌のこのメロディーを。この静かな叫びを。

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